ゆきゆきて、神軍
2012.08.09
DVDの整理をするついでに、古いビデオテープも何とかしようと、引っ越しの時のままになっていた段ボール箱をあけてみた。殆どは引っ越しの時に処分したので残っていたのはお気に入りの映画ばかりだったが、その中にとっておいたのも忘れていた一本のテープがあった。
タイトルは「ゆきゆきて、神軍」原一男監督のドキュメンタリー映画だ。「すごい!」としか言いようのないこの映画を見たときは思考停止状態になって、しばらくは自分がどこにいるのかもわからないような感じがしたのを思い出した。

奥崎健三という一人の男を追い続けるこのドキュメンタリーは、観る者を巻き込んで翻弄し、最後は「あっっっー!」という声しか出てこない。後味も感想もない、混乱して頭の整理がつかない。そんな映画だった。もう一度見るには勇気がいる。
原一男監督のドキュメンタリーは、他に小説家井上光春の晩年を追った「全身小説家」があるが、これは何度観ても途中で眠くなってしまって恥ずかしながら最後まで観ることが出来なかった。
お盆が近いせいか、父のことをよく思い出す。大好きな晩酌をしながらポツリポツリと語る戦争の体験談は、子供心にドキドキしながら聞いたものだった。
父の話は残酷な背景がありながらもユーモアを交えてあり、クスリと笑えるようなエピソードや、体験者でなくては語れない凄味を感じさせる話などいくら聞いても飽きなかった。この「ゆきゆきて神軍」はそんな記憶をひっくり返すような内容で、観る者を圧倒する。